悲哀 ーそんな時はー

2020年03月07日

この商売をしていると、否が応でも仕事の上でいろいろと人様の人生にかかわっていくことになります。

 

そんなこんなで、これまでも多くのお客様との出会いと別れを繰り返してきました。

 

特にお別れに関しては、就職や結婚、昇進に伴う人事異動など、お客様の今後の人生にとって、晴れがましくも喜ばしいお別れとなるのならこちらとしてもとても嬉しい気分になるのですが、なかには、お部屋の中で誰に看取られることもなく一人寂しく旅立たれ、悲しいお別れとなることがあります。

 

そのような時には、多くの場合、私どもからご遺族の方に連絡を差し上げることになり、後々お部屋の中の遺品などの引き取りについてお願いをすることになるのですが、残念ながら、遺品の引き取りを拒否されたり、そればかりか、用件を告げると訝しげに自分には一切関係ないと電話を切られてしまうことがあります。

 

過去において、故人が、ご遺族である親や子・兄弟姉妹とどう接してきたのか、また現在まで、どのような関係性にあったのか、私たちには一切知る由がありません。

 

所詮、憶測でどんなに勝手な想像をめぐらせても、お身内の方々にとっては、第三者には到底解りえない事情があって、それぞれの愛憎相反する感情との葛藤の中で導き出した結論であろうことを、私たちは理解しないといけないこととは承知しているつもりです。

 

それだけに、けっして軽々なことは言うつもりもありませんし、私たちは仕事の上で出会っただけの、まったくの赤の他人ではありますが、それでも故人の生涯に思いをめぐらせ何とも言い知れぬ悲哀を感じてしまうのです。

 

そんな時は、もどかしさとともに去来するやるせない感情を抑えつつ、人知れず手を合わせることだけしかできません。